24 健康診断

健康診断の種類と費用負担

健康診断はどのようなものがあるのでしょうか?

健康診断の種類内容
一般健康診断雇入時の健康診断
定期健康診断
特定業務従事者の健康診断
海外派遣労働者の健康診断
特殊健康診断有害な物質を扱う労働者などが対象

一般的に健康診断と言われているのは雇入時の健康診断定期健康診断の事です。定期健康診断は1年以内毎に1回実施しなければなりません。

費用負担

これらの健康診断の費用及び受診時の賃金はどのように扱えば良いのでしょうか?

健康診断の違いによる会社負担義務

種類費用賃金備考
一般の健康診断有り望ましい雇入時、定期健康診断など
特殊健康診断有り有り有害な物質を扱う労働者など
任意の検査無し無しがん検査など任意の検査
再検査・精密検査無し無し定期健康診断等後の検査
二次健康診断無し無し定期健康診断等後に脳・心臓の項目に異常有り

一般の健康診断に関しては労働安全衛生法により義務化されているので、その費用については当然会社が負担すべきとされています。(昭和47年9月18日基発第602号)

賃金に関しては当然に会社に支払い義務があるとはされていませんが、健康の確保は事業の円滑な運営の不可欠な条件であることから、受診に要した時間に対する賃金は支払うことが望ましいとされています。(同通達)

特殊健康診断に関しては業務遂行に関するものですので、費用も賃金も会社に負担義務があります。

健康診断の時に任意のがん検診などを付加する会社も多くありますが、これらの費用負担は当然任意です。全額負担、半額負担などが考えられます。

また、定期健康診断等の結果、異常が認められた時の再検査・精密検査・二次健康診断に関しては会社の負担義務はありません。定期健康診断等の結果、脳・心臓疾患に関連する項目に異常があると診断された場合は二次健康診断として受診できますが、こちらは労災指定病院で受診することで費用の負担なく受診できます。

労働者の受診義務

一般の健康診断、特殊健康診断ともに労働安全衛生法で定められている健康診断ですので、労働者にも受診義務があります。もし受診しない労働者がいる場合は会社は義務であることを粘り強く説明し受診してもらう必要があります。

任意のがん検診などは勿論、労働者は受診義務はないことから会社が強制することは出来ません。

会社の福利厚生で任意のがん検診などを行う場合は多々ありますが、労働者が断った場合は強く強制するものではありません。

健康診断の対象者と項目

健康診断の対象者

康診断の対象者は常時使用する労働者となっています。

では常時使用する労働者とはどのような労働者でしょうか?

一般健康診断を実施すべき「常時使用する短時間労働者」とは、次の(1)と(2)のいずれの要件をも満たす場合としています。(平成19年10月1日基発第1001016号)

  1. 期間の定めのない契約により使用される者であること。なお、期間の定めのある契約により使用される者の場合は、1年以上使用されることが予定されている者、及び更新により1年以上使用されている者。(なお、特定業務従事者健診<安衛則第45条の健康診断>の対象となる者の雇入時健康診断については、6カ月以上使用されることが予定され、又は更新により6カ月以上使用されている者)
  2. その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分3以上であること。

通常の労働者=正社員の週所定労働時間が40時間の場合、週30時間以上のパート/アルバイトは対象となります。1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の概ね2分の1以上である者に対しても一般健康診断を実施するのが望ましいとされています。

特定業務従事者健診とは深夜業などの特定業務に従事する労働者に対しては、当該業務への配置換えの際および6ヶ月以内ごとに1回、定期的に、定期健康診断と同じ項目の健康診断です。(但し、胸部エックス線検査については1年以内ごとに1回、定期に行えば足りる)

なお、深夜業に従事するとは深夜業(22:00~翌5:00)を1週間に1回以上又は1ヶ月に4回以上行っている状態です。(昭和23年10月1日基発第1456号)

健康診断の項目

健康診断の項目は次のようになります。

  1. 既往歴及び業務歴の調査
  2. 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
  3. 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
  4. 胸部エックス線検査及び喀痰検査
  5. 血圧の測定
  6. 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)

34 歳以下の者と36 歳~39 歳の者については、医師が必要でないと認めるときは省略できます。

特定健康診査と特定保健指導

協会けんぽ等の医療保険者は、内臓脂肪の蓄積等に着目した生活習慣病に関する検査「特定健康診査」及び特定健康診査の結果により健康の保持に務める必要がある者に対する保健指導「特定保険指導」の実施が義務となっています。(2008年4月 高齢者の医療の確保に関する法律)

対象者は原則40歳から74歳の協会けんぽ等の被保険者・被扶養者です。

このため、協会けんぽ等では年度内お一人様1回に限り、協会けんぽが健診費用の一部を負担してくれます。

特定健康診査の項目

  1. 問診
  2. 触診
  3. 身体計測(腹囲)
  4. 胸部レントゲン検査
  5. 血圧測定
  6. 血液一般検査
  7. 肝機能検査
  8. 血液脂質検査
  9. 血糖検査
  10. 尿・腎機能検査
  11. 心電図検査
  12. 眼底検査(医師が必要と認めた場合)

などがあります。

定期健康診断は「労働安全衛生法」、特定健康診査は「高齢者の医療の確保に関する法律」と根拠法は違いますが、40歳から74歳の方は特定健康診査を受診すれば良いでしょう。

健診センターなどの医療機関もこちらを勧めると思われます。

40歳以上の人の方が、健康診断を安く受けられると認識されているのはこの違いです。

特定健康指導

特定健康診査(生活習慣病予防健診)を受けた後に、メタボリックシンドロームのリスク数に応じて、生活習慣の改善が必要な方に行われる保健指導のことです。

従業員(被保険者)は協会けんぽが補助してくれますので無料で受ける事が出来ます。

23 健康経営

健康経営とは、従業員の健康保持・増進の取組が、将来的に収益性等を高める投資であるとの考えの下、健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。すなわち従業員等の健康増進等にかかる経費をコストとしない考え方です。

健康経営とは

健康経営とは、従業員の健康保持・増進の取組が、将来的に収益性等を高める投資であるとの考えの下、健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。すなわち従業員等の健康増進等にかかる経費をコストとしない考え方です。


企業は労働安全衛生法などの法令遵守に努めることは当然ですが、人的資本に対する投資(=従業員への健康投資)を行う事で従業員の健康増進・活力向上を生み、組織の活性化及び生産性の向上を目指します。結果、業績向上、企業価値向上を目指すのです。


中小企業で健康経営を目指すメリットは、慢性的な人で不足への対応です。少子高齢化の下、人手不足になっている中小企業は先にも述べた通り6割以上となっています。


また、職場イメージの向上のためにも健康経営は大切なキーワードとなっています。2017年度より日本健康会議が「優良な健康経営を実践している企業である」健康経営優良法人の認定を始めています。認定を取るのは先でも出来ることから始めては如何でしょうか?

労働生産性の損失の抑制

アブセンティーイズムとプレゼンティーイズム

企業がより良い収益を上げていくためには、労働生産性の向上は必須です。

その為にも健康経営=『従業員の健康を高めていく経営』は必要不可欠です。

生産性の向上をするには、労働生産性の損失を抑制しなければなりません。

労働生産性の損失に関係する言葉にアブセンティーイズムプレゼンティーイズムがあります。

アブセンティーイズムとは、体調不良、病気などで会社を休む時の損失です。

プレゼンティーイズムとは、出勤しているものの体調が優れず、生産性が低下している状態での損失です。

プレゼンティーイズムの原因は、慢性疲労、腰痛、うつ病、頭痛、花粉症など様々なものがあります。

ここで大切な事はアブセンティーイズムよりプレゼンティーイズムの方が、労働生産性の損失は大きい事です。

何となく会社を休んでしまい、さらに医療費も掛かってしまうアブセンティーイズムの方が労働生産性の損失が大きいように感じてしまいますが、プレゼンティーイズムの方が、数倍の損失があるとされています。

プレゼンティーイズムへの対策

ではプレゼンティーイズムへの対策はどのような事が考えられるのでしょうか?

うつ病やうつ状態などメンタルヘルス関連の予防にはストレスチェックの実施、集団分析、職場環境の改善なども有効な方法だと思われます。

慢性疲労は長時間労働になっていないか、休暇がちゃんと取れているなどの見直しも必要になるでしょう。

腰痛や頭痛などはラジオ体操やストレッチタイムの導入なども考えられます。

取り入れられるところか少しずつ取り入れて労働生産性の向上を目指したいものです。

21 給与計算のしくみ 残業単価の求め方

残業単価の求め方

法定外労働時間の割増賃金、休日労働の割増賃金を計算する時の単価を計算するにはどのようにすればよいのでしょうか?

先ずは割増賃金を計算する前に1時間当たりの賃金額を求めます。

月給の場合

 1時間当たりの賃金額 = 月所定賃金額 ÷ 1か月の平均月所定労働時間

となります。

1か月の平均月所定労働時間

 1か月の平均月所定労働時間 = 1日所定労働時間 × 年間所定労働日数 ÷ 12

で計算します。労働基準法上は、1日8時間、週40時間が一般の企業の上限労働時間になるので、1日8時間だと、週休2日が必要となり、年間所定労働日数は260日となります。

 8時間 × 260日 ÷ 12 = 173.33 時間

となります。

但し、祝日、年末年始などを休日に定めている企業が多いので、実際にはこれより少なくなります。就業規則や年間カレンダーなどで確認する必要があります。変形労働時間制を採用しているともう少し計算方法は複雑になるでしょう。

月所定賃金額

次に月所定賃金額ですが、基本的には月に決まって支払う手当も加算します。基本給だけで計算すると間違いになります。

但し、次のような手当は加算せず除外できます。

  1. 家族手当
  2. 通勤手当
  3. 別居手当
  4. 子女教育手当
  5. 住宅手当
  6. 臨時に支払われた賃金
  7. 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

これは、例示ではなく限定列挙とされています。該当しない手当は全て加算する必要があります。

但し、注意があります。例えば家族手当、通勤手当、住宅手当として支給しても次のような場合は除外に該当せず、加算する必要があります。

家族手当
扶養家族の有無、人数に関係なく一律に支給する場合
通勤手当
通勤に要した費用、距離に関係なく支給する場合
住宅手当
家賃、住宅ローン等に比例せずに一律に支給する場合
独身者は5,000円とか、持家の人は10,000円とかは除外されず加算対象になります。

除外に該当する手当は、意外に少ないことに注意してください。役職手当や皆勤手当も除外されません。

基本給だけで残業手当等を計算すると思い込み、本来基本給に該当する額を、適当に家族手当、住宅手当と振り分けて計算している企業が見受けられます(比較的小さな会社が多いですが…)。注意してください。

皆勤手当は皆勤で支給がある場合と支給がない場合では、単価が月によって変わることあり得ます。正しく電卓で計算するのは難しいでしょう。少なくともExcelで式を組んで計算するか、可能であれば専用の給与計算ソフトを使うべきでしょう。

割増賃金率

時間外労働2割5分以上
(1か月60時間を超える場合)5割以上
法定休日労働3割5分以上
深夜労働2割5分以上

 1時間当たりの賃金額 × 割増率 × 対象時間

で割増手当をそれぞれ求めることになります。

時間外労働が深夜に及んだ場合は時間外労働の割増率と深夜労働の割増率を加算するので

 2割5分(時間外) + 2割5分(深夜) = 5割

となります。

そもそもの所定労働時間が深夜労働となる場合は、深夜労働の2割5分の割増をつけないといけません。

例えばコンビニなどで22時から5時までのシフトで労働する人には、深夜以外の時給が1,000円の場合、1,250円となります。